The Cult Of Dormal
“船乗り”ドーマル 
Dormal The Sailor
- 神話と歴史
第二期最大の災厄の一つ、邪悪な魔道士ザブールの大いなる呪いは、洋上のあらゆる船を一掃した。世に言う「大閉鎖」である。抗い難い力があらゆる船を海の陸地の見えない部分から押し戻した。以後数世紀、船は内海や沿岸部を航海することしかできなかった。
大閉鎖の正確な性質は、それが終わった原因とともに、今もって謎のままである。ドーマルすら「自分は呪いを解いた」とではなく「呪いに抜け道を見つけた」と言っているだけである。とはいえ事実上、彼によって大閉鎖は解かれ、再び戻っては来ていない……少なくとも現在のところまでは。
ドーマルはケタエラの聖王国と呼ばれる地の生まれであり、この地の慈悲によって成長した。そしてついに先人の研究成果をもとにして閉ざされた海へと乗り出した。彼以前にも多くの試みが行なわれていたのだか、それらは失敗に終わっていた。
ドーマルは友人たちの、そして自らの心の導きに従って、この偉業を成功させた。1580年の春、ドーマルはハンドラやスリーステップ諸島まで航海し、無事ケタエラに戻ってみせた。こうして海は開かれた。
驚くべき出来事であった。これを知ったファラオは即座に、さらに多くの船を建造させた。ドーマルは自分の愛船に加えてこれら新造の船団を率い、東に向かって探検と解放の航海に出た。
まずハンドラの町に再び立ち寄った。この地の民は知らせをむだにせず、すでに船を作っているところであった。小舟の群が「嘆きの海」じゅうに散らばり、土者のトリオリーニと友好関係を結んでいた。
1580年末、ドーマルはハンドラを発ったが、冬が来て波がますます荒くなり、船団はアラタンに避難せざるをえなかった。アラタン島の王ジョバールは強面の冷酷な男で、ドーマルを殺して船団をわがものにしようとした。だが殺されたのは王のほうであった。島には新王が立った。
1581年、ドーマルはセシュネラ諸島を抜けてパソスに至り、海を渡ってヴェイデル諸島をも訪れた。その年の残りは「最初の魔道士」ザブールの故郷ブリソスを探し回ったが、咆えたける霧と、海のさまざまな恐怖とに出くわしただけであった。そのかわりヴェイデルの赤色諸島と未知の島民とを発見し、錨を降ろした。
1582年、ドーマルはセシュネラに戻ってこの地の新しい町々や古い遺跡の地図を作った。ローフォルでは魔道士たちに捕われかけたが何とか切り抜けた。北進してフロネラに至ったときには侵略者に間違われて、湾に潜んて大閉鎖の影響をまぬがれていたロスカルム艦隊から攻撃を受けた。ドーマルはこれを防ぎ、自分の技術が価値あるものだと証明してみせた。
ドーマルはロスカルム王と友好関係を結び、冬の間フロネラに留まった。1583年、さらに北進したが、氷河につき当たったので進路を西に転じた。
最後に立ち寄ったのはイッグス諸島である。ここで、船団の一隻が難破したが、ドーマルはイッグス諸島の野蛮人たちの警告にも耳を貸さず、西のルアーセラ目指して出帆したのである。
ドーマルの司祭の語るところ、彼はこうして航海の果てに不死と神性を手にし、現在のような力を得たのだという。
ドーマルの故郷・聖王国は外洋艦隊を建造した最初の国となった。ドーマルが西へ旅して航海の技術を広めている間、ケタエラ艦隊は「嘆きの海」に出てトリオリーニと手を結び、豊かなハンドラ市の船団に圧迫を加えていた。そして1582年、第三期初の艦隊戦が勃発した。
アラタンの新王もまた、速やかに船団を建造していた。王はこれに兵員を乗せて諸方の岸辺に送り、多くの都市を攻略して港にした。これを足がかりに、さらに近隣の土地土地を襲撃し始めたのである。
この事態に、嘆きの海のトリオリーニたちはケタエラに助けを求めた。1582年夏、ケタエラの42隻とアラタンの50隻の船が激突、戦はアラタンの勝利に終わった。以後、多くの島かアラタンに貢納するようになった。世界のあちこちで、商船団・軍船団が作られるようになった。ケタエラ、アラタン、パソス、ヴェイデル、アロラニート、ロスカルムかそのおもなものである。いずれも1583年までにはかなりの数の外洋船を抱え、沿岸部に勢力を張っていた。
天然資源の乏しいウェイデル諸島はすぐに他国の物資を輸送して富を得るようになった。彼らは褐色海とジルステラ諸島間から他国の船を締め出した。そして大艦隊を建造してそこに乗リ込み、「われわれはドーマル神の使いである。この地を統べ、おまえたちを先祖の罪から救うべくつかわされた」と称したのである。こうして彼らは8年間この一帯を支配したが、8年目に他国人かやって来て反乱を扇動したため、この体制もくつかえされた。
ヴェイテルの船乗りたちはジルステラで足を止めたわけではなかった。さらにタダショーモ海を渡り、ウラロスやエンクロッソに残る諸都市に至った。原住民は頑強に抵抗したが、ついに北方から来た戦士たちに敗れた。だが、このエンクロッソにおける「沿岸ヴェイデル戦争」で、東パマールテラの住民は時を稼ぐことができた。また湾状のマスロ海には水軍の伝統が脈々と受け継がれてもいた。この地の王フーム・ジスはこれを躍進の好機と見て艦隊を西へ進め、マーシノ海沿岸を勢力下に置いた。1594年、フーム・ジスはブェイデル人と戦端を開いた。ヴェイデル脚家の多くは岩礁に乗り上げて難破、だがマスロ艦隊もまた壊滅した。かくてフーム・ジスの努力もむなしく、各地の港の多くは独立港となったとはいえフーム・ジスの商船団が東海岸の航海・商新崔を押さえているのも確かだった。
そのころ、ケタエラはアラタンの海賊と苦しい戦いを続けていた。1585年、パソスがアラタンを攻撃したか、海賊たちは島を敵の荒すにまかせてすばやく遁走した。そこでケタエラ艦隊は「嘆きの海」一帯を探し回り、魚人族の助けも得てようやく海賊団を発見、これを撃滅した。ケタエラとパソスは「アラタンの船は見つけしだい鎮圧する」という協定を結び、海賊玉国はすぐにいくつもの海賊団に分裂した。
1586年、ケタエラから正規の探検隊か東へ出帆した。テシュノスに着いて、艦隊指揮官の提督はドサカヨ港を設立した。次なるフェスロンとトロウジャンは小舟に乗った海賊(イエロー・エルフ含む)の多い土地だったが、あるときは協定を結び、あるときは戦い、あるときは迂回して何とか通り抜けることに成功した。翌年、艦隊はクラロレラ沿海に出た。
艦隊は万事うまくいくと期待していたか、そうはならなかった。クラロレラの内海水師(艦隊)の攻撃を受け、全滅したのである。
この報は1588年にケタエラに届いた。ファラオはドサカヨとの交易を強化し、クラロレラを締め出した。
クラロレラは海が開かれたと知って外洋水師(艦隊)を建造はしたが、龍帝は沿海の安全を保てばよしとして夷狄のことにはかかわろうとしなかった。だが大胆なクラロレラ商人は海外へ雄飛した。彼らはテシュノスと交易し、また伝説の東方諸島をも探検した。1589年ごろには、クラロレラ=東方諸島間に断続的なものではあるが貿易が成立していた。大閉鎖の間も、東方諸島では島づたいの航海が可能だった。おもな島の一つにハラガラかあった。クラロレラ商人が「海が再び開かれた」という報らせをもたらすや、ハラガラの有力者たちは島を要塞化し守備艦隊を建造した。
ハラガラやクラロレラの船がテレオスに至ったのは1595年ごろのことである。彼らは危険なトガロ洋の海流を乗り切ろうとはしなかったか、1898年にマスロの船乗りたちかやってのけたと知ると喜んでこれを迎えた。
かくて1598年、人類の知るすべての海は開かれた。四世紀にわたる呪いは20年足らずで解かれた。自然に至るところでもめ事が起こり、各地て新たな海軍か生れ、覇権が生れて、古い秩序は崩れ去った。船に慣れていない魚人たちとの問にも争いが起こった。
それでも、1600年までには世界のすべての海が航海可能になっていた。
ドーマルの信徒は海に埋葬される。祈りの文句は死んだ人間の出身文化によって違う。陸上で死んだ信徒も、多くは儀式として海に返される。儀式といっても大げさなものではない。親しい者たちが船をこぎ出し、死者を海中に投げ込むだけのこともある。
ドーマルのルーンは「意思疎通」と「水(0cean)」である。「移動」のルーンをも帯びているとされることもある。
- カルトの生態
今日の船乗りは皆ドーマルとドーマルが大閉鎖を破ったことを知っており、自分たちが船乗りとして生きてゆけるのもドーマルのおかげだと感謝している。
ドーマルの信徒は海と風との間に生きているようなものだ。彼らは海と風の双方を利用しようとするが、時には荒れ狂う海と風をなだめねばならない。
魚人は船乗りには大いに助けになるが、現実には、多くの魚人は人間には敵意しか持っていない。だから魚人とは用心深く、しかし友好的に接する。混沌はむろん万人の敵である。
航海中ドーマルが大地に降り立った場所は、今ではドーマルの聖地となっている。その土地で、たまたまドーマルが崇められていたりすればそこには巨大な社が建つ。ドーマルの船団の難破船の船体をそのまま使っている例もある。
ドーマルの聖日は各季の豊穣の週・水の日、大聖日は海の季・豊穣の週・水の日である。
現実には、聖日にも船はおおかた海に出ており、神聖な儀式に加わることはできない。聖日に海上にいた入信者は、次の季節にドーマルの寺院のある港に入ったときに儀式を行なう。港にいるドーマルの司祭たちは、いつでもそうした船員のために聖日の儀式を行なう準備をしている。船員はこれに対して謝礼を払わねばならない。それはそのとき持っている金の20分の1である。
ドーマルの宗教儀式は短く熱狂的である。水夫の多くは丸1日かかるような大仰な儀式にはつきあいたがらない。港にいられるのが1日だけという場合もあるからである。
- 世界におけるカルト
ドーマルのカルトはいたる所に存在するが、政治的影響力はほとんどない。ドーマルの司祭たちは海と船乗りのことには関与するが、国政には関与しない。そして船乗りは船団の腕ではあっても頭脳ではない。
皮肉なことにドーマルのカルトは故郷ジェナーテラではあまり広まっていない。例外はケタエラで、ここでは船乗りのほとんどがこのカルトの者である。
マニリア沿岸やテシュノスの船乗りもある程度はドーマルを崇めている。西方のマルキオン教徒の港にもケタエラから来る船乗りのために小さな寺院かある。
パマールテラの北岸一帯やテレオスやローラルでは、ドーマルは広く崇められている。ジルステラの人間の住む島々の岸にもドーマルの寺院はある。
パソスやロスカルムの人々はドーマルのことをおぼえており、クラロレラやハラガラの人々はドーマルのことを聞き知っている。しかし、これらの地の船乗りはドーマルを神として崇めるのではなく、自分たちの古来の神のほうを尊しとする。
50人乗り以上の大きな船にはドーマルの社があることが多い。船付きの僧侶(chaplain)が雇われ、船員の告解を聴き船員の世話をする。軍船団には時として「聖なる船」とでも言うべきものがあって、小寺院(時には中寺院)相当の機能を果たす。
ドーマルの通常の寺院はほとんどが海港にあって、規模はまちまちである。社ではどこでも《天候予測》を教えている。
ドーマルを崇める水夫が頻繁に立ち寄る大きな港には、大寺院相当の寺院がある。そこでは一季節の間じゅう船乗りが立ち寄っては礼拝を済ませていく。小さな港や他の船乗りの神が支配的な土地の港では、中寺院や小寺院があるだけである。社はもっぱら沿岸の村や船上にある。
ドーマルの寺院にとくに定まった組織というものはない。必要な礼拝・儀式を執り行なうだけの数の司祭がいればいいというだけである(もっとも、立ち寄る者が多い大きな港ではこれを満たすことすら難しい)。大寺院では司祭の一人……たいていはもっとも信望のある者が大司祭となり、人事・経済・法律上の諸問題を取りしきる。しかし儀式を司どることはめったにない。
- 入信者
入信は、他のカルトに入っておらず父母のどちらかがドーマルの入信者であるなら無条件に認められる。これに当てはまらない場合、通常の儀式的試験をくぐり抜けねばならない。必要な技能は〈鑑定〉〈操船〉〈製作(木材)〉〈泳ぎ〉〈世界知識〉。
入信者は船が入港するたびに、現在の所持金の20分の1を船の司祭に与えねばならない。多くの船では、この5%の税は水夫が入信者であるか否かを無視して、一律に給料から天引きされる。
ドーマルの入信者は魔道士や祈祷師であってもよい。種族による制限もない。
聖王国を始めとする多くの土地で、ドーマルの信徒でない水夫を乗せて航海するのは不吉であると考えられている。そのため、こうした水夫たちは寄港中にトラブルに巻き込まれることもある。ドーマル崇拝は船員たちの同胞意識の源となっており、そのため入信者は多くの船で職を得ることができる。
このカルトは魔道呪文《開洋》を教える。また、入信者はドーマルの神性魔術を一回限りで、使うことができる。
- 待祭
献身的な人信者は侍祭になることがある。必要条件は司祭に準ずる。司祭と違い、侍祭は入信者から献金を受けることはない。だか礼拝儀式を行なうことができ、一時的に船付きの僧侶役を果たすこともできる。また神性呪文の再使用もできる。
- 司祭
ドーマルの司祭は水夫たちの霊的・魔術的な支えである。あらゆる国の軍船団・商船団の背骨で、あり手足である。彼らは水夫たちと同しくらいよく働き、加えて流れ者である信徒たちへの理解と共感にあふれている。
ドーマルの司祭は通常の司祭の条件に加えて、《開洋》呪文を知っておらねばならない。司祭といっても特別の人間ではなく、多くは普通の船乗りが現役を退いて司祭になったものである。ドーマルは普通人のカルトであり、ドーマルを崇拝しようなどと考える富豪や貴族はごく少数である。
司祭は通常の船乗りの生活をやめ、もっぱら霊的な仕事に打ち込まねばならない。ドーマルの司祭は船付きの僧侶として働くこともあれば、港の寺院の司祭になることもある。水夫たちから得た金の90%は所属する寺院や船の維持・補修、また怪我などで海に出られない水夫の保障などに使わねばならない。残る10%が司祭の生活の足しになる。
- 友好カルト
- ブラスタロス
- 航海の途中、ドーマルはマガスタの花嫁にして七つの風の女王、嵐の目なるブラスタロス女神の好意を乞い願った。ブラスタロスは司祭に《風力減衰》を提供する。
- マガスタ
- ドーマルは恐るべきマガスタにも出会い、友となった。マガスタは《浮揚》を提供する。
- ドーマル特殊魔道呪文
《海洋》 Open Sea
儀式(浄化)
この呪文をかけるには10分を要する。船が出帆または投錨するときには必ずこの呪文をかけねばならない。もし呪文が失敗すると、船から陸地が見えなくなるとすぐに「大閉鎖か再び生して、船に破滅をもたらすことになる。
外洋に乗り出す船乗りたちは、グローランサのどこの住民だろうと、皆この儀式を知っているか、それを知る熟練者を船に乗せている。そうしないと海上の旅は不可能である。
- ドーマル特殊神性魔術呪文
《天候予測》 Predict Weather
2ポイント、特殊、瞬間、複合不可、再使用可
この呪文によって、術者は以後24時間の天候をおおまかに知ることができる。ただし嵐の魔物の働きや、天候を左右する呪文による変化はわからない。
Tales of the Reaching Moon #10 より
Copyright 1991 by chaosium inc.
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