RuneQuest Cults JAPAN

ポチャンゴ


  1. 神話
  2.  変化の神ラーンステイの娘の女神がいた。その服、髪の色、唇の色、香り、スタイル、気分、居場所は常に変化し、一瞬たりとも同じ様相を保つことはなかったが、変わらぬものが2つだけあった。美しさと好奇心である。
    女神のあどけない無垢の美しさに魅かれ、何人もの求婚者が現れたが、だれ一人として女神を自分の元に留めておける神はいなかった(オルランスは2度に渡って拒まれたという)。

     女神はその美しさ以上に好奇心が強く、驚異に溢れた世界の隅々を見てまわろうといつも旅に出ていた。

     北への旅の途中、女神の耳に不思議な聞いたこともないような声が世界の端から聞こえてきた。その声はなにかのあえぎ声のようでもあり、苦しい叫び声のようでもあり、喜びの声でもあるように聞こえた。
     女神が世界の端に着くころにはその声と声の主は消え、後には動物の抜け毛のようなものと血溜りと、見たこともないような液体とも固体ともつかない汚らしい物体しか残っていなかった。
     しかし女神はそれ以上のものを目の当たりにしていた。世界の裂け目が女神の目の前にぱっくりと口を開けていたのである。世界の隅々まで見てきた女神にとってさえ、世界の外側は初めて見る驚異であった。だが同時にその裂け目からはおぞましい凶々しさに満ちた気配が漂っていた。あまりの凶々しさに女神のすらりと伸びた美しい脚は震え、心臓がぎゅっと握られるような思いであったが、好奇心に負けた女神はその裂け目へ恐る恐る近寄っていった。

     そのとき裂け目から何物かが突然飛び出してきた。その不定形のモノは女神を呑み込み、女神の体の10の穴から体内に潜り込み、必死にあらがう女神を内側からむさぼり食っていった。
    やがて女神の魂に辿り着いたそのモノは、そこで女神の変化の力と一つになった。

     倒れていた女神が目を開けて立ち上がった。女神には今までの無垢の美しさではなく、妖艶な隠微な美しさが漂い、その目と手に触れた物は美しくも凶々しい変化を遂げていった。そしてこの上もなく美しい声で笑い声をあげ、父なる神をこの世に招きいれるべく裂け目の周囲に変異をおこしてまわった。

     暗黒の時代に女神は多くの男神を誘惑し、精を吸い付くし滅ぼし、異形の神へと変えていった。また汚れをしらない新しい種族に倒錯した狂気を植え付け変異させていった。特にオーガの誕生に深くかかわったといわれている。
    また、この変異の女神の魅惑と淫らな罠の前に、他の女神すら陥ちたといわれる。

     そして女神は新しい獲物に出会った。ありとあらゆる手練手管を操りその獲物を誘惑し、狂気を植え付けようとした。しかし獲物−暗黒の戦神−は、そこ知れぬ食欲でその狂気すら食べつくし、無限の憎しみと混ぜあわせ、新たな狂気を産み出した。破壊の狂気に全身をゆだねた暗黒の破壊神は、反対に女神に襲いかかり、限りなく美しい肢体を斧でばらばらにして去っていった。

     そのときから女神には、誘惑した相手に襲われるという新しい楽しみが増えたといわれている。

  3. 歴史
  4.  曙の時代、ばらばらにされた女神の体のそれぞれの部分は世界各地で変異と美をもたらす神として小規模ながら崇拝されていた。
     帝国の時代にオーガの神知者達は女神の破片を集めポチャンゴ(パマルテラのオーガ部族の言葉で「生なき狂気の宴」の意味)カルトとして復活させた。
     現代ジェナーテラにおいては頽廃したルナー帝国の宮廷内で公にポチャンゴ崇拝が行われているといわれている。

  5. カルトの特徴
  6.  ポチャンゴは各地でそれぞれ異なる名前で呼ばれている。ルナー勢力圏ではラーンステイの娘ランステアと呼ばれる。
     ランステアは、まず第一に美(それも妖艶な美)の女神として崇められている。このカルトのメンバーは例外なく美男美女であり、カルトに加わることによりその美に一段と深さが増すといわれている。
     次にランステアは前衛芸術の守護神であり、このカルトのメンバーは先進的、頽廃的、前衛的な作品の芸術家達である。ホンイールカルトとはライバルの関係にある。現代まで残る世界的な前衛芸術作品の多くがランステアカルトの信者の手になるものといわれる。
     3番目には倒錯と狂気の神としての面があるが、公に崇拝されることはほとんどない。このカルトのメンバーは社会良識からかけ離れた性的倒錯に浸り、最後には精神だけでなく肉体すらおぞましいものに変異してしまうといわれている。この3番目の面は今まで2度大きな勢力を持ち、世間にその存在を公にしたことがある。太陽暦500年のころと1050年のころである。どちらの場合も、比較的大きな領地をもつ領主が倒錯した饗宴にふけり、領内を狂気で満たした。その狂気はやがて国中に広がり、社会秩序と良識を完全に破壊した。国自体が大きな戦により滅ぼされるまでその狂気は広がりつづけたといわれている。

     ランステアは妖艶な美しい裸体の女性として描かれる。同時にその魅惑的な裸身には、異形のものが絡み付いている場合が多い。

     ランステアのルーンはケイオスと移動と生なき美である。

  7. 平信者
  8.  美の女神ランステアは、女神の美を称える者はだれであろうと平信者として認める。平信者は<グラマー>呪文、媚薬作成技能、化粧技能を買うことができる。
     前衛芸術の神ランステアは、前衛芸術を志す者はだれであろうと平信者として認める。平信者には前衛芸術の泰斗が集う集会所への出入りが認められる。
     倒錯と狂気の神ランステアは、倒錯者を平信者として認める。平信者には「悦楽の宴」への3度までの参加が認められる。

  9. 入信者
  10.  美の女神ランステアへ入信するには容姿端麗でなければならない。ランステアカルトへの入信は美の証であり、宮廷の若い女性は皆ランステアカルトへの入信を熱望している。1610年の記録によれば宮廷の女性でランステアカルトへの入信を希望する率は85%程度であり、入信者は全体の5%程度である。
    毎年行われる「美の饗宴」では未婚女性の新しい入信者が美を競い、宮廷男性の投票により「美の女神」を選出する。「美の女神」に得ればれた入信者は1年間レディーと同じ扱い(多くの場合はそれ以上の待遇)を受け、公的な儀式の場において、皇帝に直に付き従う栄誉を与えられる。皇帝のハーレムの女性の多くが元「美の女神」出身である。
    同様のことが未婚男性の新しい入信者に対して行われている(投票者は当然女性である)。こちらはあまり派手に行われない。「美の神」に選ばれた男性は高位の女貴族のハーレムに加わることが多い。
     大きな都市にはランステアカルトがある。各都市の「美の女神」は首都グラマーでの「美の饗宴」に参加する権利を持つ。一介の村娘が近隣都市の「美の女神」となり、最後は皇帝の愛を受けるというサクセスストーリーがお伽話として語られている。
     美の女神ランステアは入信者に以下の呪文と技能を与える。
     戦闘魔法:《コーディネーション》《グラマー》《ビガー》
     ルーン魔法:《ビューティー》《チャーム》(どちらも再使用不可)
     技能:媚薬作成、化粧、ハジア精製

     前衛芸術の神ランステアへ入信するには、作品がカルトに認められなければならない。カルトは入信者に対してスポンサーを斡旋し、個展開催を援助し、年に1回品評界を開催する。品評界には貴族も多く出入りし、現在ルナー帝国最高の前衛芸術家の双璧といわれるリーダとソーカーピはともに品評会で皇帝から認められ、皇室付き芸術家となった。
    入信者には以下の呪文が与えられる。
     ルーン魔法:《コマトーズ・インスピレーション》(再使用不可)

     倒錯と狂気の神ランステアへ入信するには、「悦楽の宴」に3度とも参加し、女神からの啓示を受けなければならない。「悦楽の宴」とはアングラな乱交パーティの一形態である。宴の会場はハジアの煙が充満し、どぎつい色のランプが灯され、妖しい調べが流れている。
    宴がエスカレートするとただの乱交ではすまなくなり、さらにおぞましい狂気のレベルに達する場合がある。ここで女神の啓示を受け、正気を振り払った者が入信者となる。啓示は宴に参加したプリーストが〈センス・ロー〉技能を使うことで判定することができる。
    入信者にはセンス・ロー技能が授けられる。また再使用不可ながら《アブノーマル・シンポシュオン》が授けられる。また「悦楽の宴」の場でプリーストに直に触れることが許される。

    狂気度と狂気体験:
     狂気は狂気度であらわされる。正気を振り払う(宴の最後にPOW×1のロールに成功する)と狂気度が5%になる。以降、狂気体験(D100で狂気度かPOW以下の目をふる)に成功することで、通常の技能のように経験で伸ばすことができる。
    狂気度が25%、50%、75%、100%を越えた時点で肉体的な変異が1つづつ発現する。肉体的変異は多くても1シーズン1回である。
    狂気度のロールでPOW以下の目をふると、呪文抵抗に成功したように、POWにチェックを入れることができる。
    狂気度が5%以上になるとセンス・ロー技能では関知できなくなるが、センス・ケイオス技能でも関知できない。肉体的変異が発現したときからセンス・ケイオス技能に関知されるようになる(ただしカルト特殊ルーン魔法を得ると、狂気度によらず関知される)。

     狂気体験は大きな肉体的、精神的快楽を伴い、スペシャル、クリチカルの成功はさらにその度合が強くなる。宴の倒錯の度合により狂気体験ロールへ修正が加えられる(マスターの裁量 クトルフを参考にするとよい)。
     例:カリグラ帝の血の宴 +30%

     狂気の誘惑への対抗は100%−狂気度で判定する。狂気体験の直後は200%−狂気度であるが、1日に5%づつ確率が減って最終的には100%−狂気度となる。誘惑に負けると狂気体験を渇望するようになる。失敗しても狂気体験に対するマイナス感情にはならない(ただ誘惑が起きなかっただけである)。
    ファンブルすると狂気体験を一時的に嫌悪し、次のロールまでは狂気体験を望まなくなる。通常は2週間に1度程度このロールを行う。

  11. ルーンロード
  12.  ランステアカルトにはルーンロード階級はいない。

  13. プリースト
  14.  ランステアカルトのプリーストは倒錯と狂気の具現である。「悦楽の宴」を開催し、新たな犠牲を用意し、信者に変異の喜びを与える。
    プリーストになるにはセンス・ロー技能が90%以上、狂気度が90%以上、POWが18以上必要である。

    カルト特殊ルーン魔法:

    アブノーマル・シンポシュオン(倒錯の宴:Abnormal Symposion)
     1ポイント、接触、持続、重複可、再使用可
     対象に「悦楽の宴」の最終段階の狂気体験を与える。重複させると接触している者ならばその重複分の人数に狂気体験を与える。
    この狂気体験は擬似的なもので、POWチェックと狂気度への経験チェックは入らないが、得られる快楽はほぼ同じである。
    本当の「悦楽の宴」の最終段階にこの魔法を使用すると、快楽のみ成功レベルがあがったように感じられる。この魔法はプリーストには作用しない。

    チェンジ・ケイオスフィーチャー(混沌の諸相の変化:Change Chaos Feature)
     2ポイント、接触、持続1年、重複不可、再使用可
     対象の持つケイオスの諸相を変化させる魔法である。セドの呪いかケイオスの諸相かから決めなおす。一度変化させた諸相は1年間は変更できない。また1年経つと持続時間が切れ、もとの諸相(又はセドの呪い)に戻る。1ポイントのディバイン・インターベンションを重複することにより諸相を選ぶことができる。ただし同じ諸相を2回以上選ぶことはできない。
    この魔法を再使用不可として使用すると、変化が永続する(諸相を決めてから永続させるかどうかを決定してよい)。

    ミューテーション(変異:Mutation)
     3ポイント、接触、1シーズンか永続、重複不可、再使用不可
     肉体的変異を発現させる魔法である。この魔法は「悦楽の宴」の最終段階でのみ発動させることができる。変化を望まない対象にはMP抵抗ロールで成功しなければならない。成功すると対象に肉体的変異を発現させ、狂気度が5%増える。失敗しても1シーズンは肉体的変異と狂気度+5%が残る。
    この効果はディスペルできない。またディバインインターベンションでもその効果を取り除くことはできない。

  15. 関連カルト
  16. 美の女神サブカルト:
     美の女神への信仰がエスカレートするとナルシシズムへと変成し、それをきっかけに自己の美への執着という狂気が始まる。化粧技能のロールで狂気度以下の目をふると、狂気度の成功レベルの分だけ化粧ロールの完成度が良くなる。

    前衛芸術サブカルト:
     前衛芸術を突き詰めると、その先には倒錯の狂気が待っている。作品を仕上げる判定のロールで狂気度以下の目をふると、狂気度の成功レベル分、完成度・芸術性が良くなる。

    正気の呪い:
     ランステアカルトに入信した者が自発的にカルトに背くことはほとんどない。しかし仲間のことを売ったりする裏切り者に対しては非常に恐ろしい呪いが放たれる。これは「正気の呪い」と呼ばれ、3D6+6のPOWを持つ。
    POWの抵抗ロールを行い、呪いのPOWに負けると狂気にならず、したがって狂気から得られる快楽が奪われ、その上に快楽への渇望がより増大する。呪いのPOWに負けた信者の多くが最後の逃げ道である自殺を採択する。

    ポチャンゴ:
     サーターやプラックスなどの文化レベルの低い地域ではもっと直接的にポチャンゴの変異の力そのものを崇める信仰形態がとられる。
    この信仰形態においてはポチャンゴは人格神ではなく、カジャボアの力を担う隷属神として崇められ、変異がもたらす快楽ではなく、変異の結果生じる状態(ケイオスの諸相や新奇の力)が信仰の目的となる。
     多くの場合他のケイオスカルトのメンバーがより大きな力を求めてポチャンゴの儀式に参加する。

    プライマル・ケイオス:
     ポチャンゴの父と同一視される神であり、全ケイオスカルトの源泉でもある。プライマル・ケイオスは《ケイオス・フィーチャー》を提供する。

    クラシト:
     ランステアと共謀し、ラーンステイの移動のルーンを食いちぎって以来、クラシトはランステアと友好関係を保っている。クラシトはランステアにセンス・ロー技能を提供する。

    オーガ:
     ランステアはオーガ族の誕生に深くかかわり、オーガはその血塗られた残虐性と肉体的な美をランステアから得ているといわれている。
    オーガは持ってうまれた性質からランステアカルトのメンバーに相応しいため、ランステア信者が多い。


注:この作品はルーンクエストの公式資料ではなく storm mark が個人使用するために作成したものである。実際のポチャンゴカルトの設定とは全く異なる。この作品の使用は本作品の末に明記してある範囲内で自由であるがそれによるいかなる損害の責任も storm mark は負わない。

※ Copyright 栗原 守(storm mark) 1994/01/03
 ルーンクエストはホビージャパン社の登録商標です。

 この作品の著作権は著者に帰属します。
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