女神はその美しさ以上に好奇心が強く、驚異に溢れた世界の隅々を見てまわろうといつも旅に出ていた。
北への旅の途中、女神の耳に不思議な聞いたこともないような声が世界の端から聞こえてきた。その声はなにかのあえぎ声のようでもあり、苦しい叫び声のようでもあり、喜びの声でもあるように聞こえた。
女神が世界の端に着くころにはその声と声の主は消え、後には動物の抜け毛のようなものと血溜りと、見たこともないような液体とも固体ともつかない汚らしい物体しか残っていなかった。
しかし女神はそれ以上のものを目の当たりにしていた。世界の裂け目が女神の目の前にぱっくりと口を開けていたのである。世界の隅々まで見てきた女神にとってさえ、世界の外側は初めて見る驚異であった。だが同時にその裂け目からはおぞましい凶々しさに満ちた気配が漂っていた。あまりの凶々しさに女神のすらりと伸びた美しい脚は震え、心臓がぎゅっと握られるような思いであったが、好奇心に負けた女神はその裂け目へ恐る恐る近寄っていった。
そのとき裂け目から何物かが突然飛び出してきた。その不定形のモノは女神を呑み込み、女神の体の10の穴から体内に潜り込み、必死にあらがう女神を内側からむさぼり食っていった。
やがて女神の魂に辿り着いたそのモノは、そこで女神の変化の力と一つになった。
倒れていた女神が目を開けて立ち上がった。女神には今までの無垢の美しさではなく、妖艶な隠微な美しさが漂い、その目と手に触れた物は美しくも凶々しい変化を遂げていった。そしてこの上もなく美しい声で笑い声をあげ、父なる神をこの世に招きいれるべく裂け目の周囲に変異をおこしてまわった。
暗黒の時代に女神は多くの男神を誘惑し、精を吸い付くし滅ぼし、異形の神へと変えていった。また汚れをしらない新しい種族に倒錯した狂気を植え付け変異させていった。特にオーガの誕生に深くかかわったといわれている。
また、この変異の女神の魅惑と淫らな罠の前に、他の女神すら陥ちたといわれる。
そして女神は新しい獲物に出会った。ありとあらゆる手練手管を操りその獲物を誘惑し、狂気を植え付けようとした。しかし獲物−暗黒の戦神−は、そこ知れぬ食欲でその狂気すら食べつくし、無限の憎しみと混ぜあわせ、新たな狂気を産み出した。破壊の狂気に全身をゆだねた暗黒の破壊神は、反対に女神に襲いかかり、限りなく美しい肢体を斧でばらばらにして去っていった。
そのときから女神には、誘惑した相手に襲われるという新しい楽しみが増えたといわれている。
ランステアは妖艶な美しい裸体の女性として描かれる。同時にその魅惑的な裸身には、異形のものが絡み付いている場合が多い。
ランステアのルーンはケイオスと移動と生なき美である。
前衛芸術の神ランステアへ入信するには、作品がカルトに認められなければならない。カルトは入信者に対してスポンサーを斡旋し、個展開催を援助し、年に1回品評界を開催する。品評界には貴族も多く出入りし、現在ルナー帝国最高の前衛芸術家の双璧といわれるリーダとソーカーピはともに品評会で皇帝から認められ、皇室付き芸術家となった。
入信者には以下の呪文が与えられる。
ルーン魔法:《コマトーズ・インスピレーション》(再使用不可)
倒錯と狂気の神ランステアへ入信するには、「悦楽の宴」に3度とも参加し、女神からの啓示を受けなければならない。「悦楽の宴」とはアングラな乱交パーティの一形態である。宴の会場はハジアの煙が充満し、どぎつい色のランプが灯され、妖しい調べが流れている。
宴がエスカレートするとただの乱交ではすまなくなり、さらにおぞましい狂気のレベルに達する場合がある。ここで女神の啓示を受け、正気を振り払った者が入信者となる。啓示は宴に参加したプリーストが〈センス・ロー〉技能を使うことで判定することができる。
入信者にはセンス・ロー技能が授けられる。また再使用不可ながら《アブノーマル・シンポシュオン》が授けられる。また「悦楽の宴」の場でプリーストに直に触れることが許される。
狂気度と狂気体験:
狂気は狂気度であらわされる。正気を振り払う(宴の最後にPOW×1のロールに成功する)と狂気度が5%になる。以降、狂気体験(D100で狂気度かPOW以下の目をふる)に成功することで、通常の技能のように経験で伸ばすことができる。
狂気度が25%、50%、75%、100%を越えた時点で肉体的な変異が1つづつ発現する。肉体的変異は多くても1シーズン1回である。
狂気度のロールでPOW以下の目をふると、呪文抵抗に成功したように、POWにチェックを入れることができる。
狂気度が5%以上になるとセンス・ロー技能では関知できなくなるが、センス・ケイオス技能でも関知できない。肉体的変異が発現したときからセンス・ケイオス技能に関知されるようになる(ただしカルト特殊ルーン魔法を得ると、狂気度によらず関知される)。
狂気体験は大きな肉体的、精神的快楽を伴い、スペシャル、クリチカルの成功はさらにその度合が強くなる。宴の倒錯の度合により狂気体験ロールへ修正が加えられる(マスターの裁量 クトルフを参考にするとよい)。
例:カリグラ帝の血の宴 +30%
狂気の誘惑への対抗は100%−狂気度で判定する。狂気体験の直後は200%−狂気度であるが、1日に5%づつ確率が減って最終的には100%−狂気度となる。誘惑に負けると狂気体験を渇望するようになる。失敗しても狂気体験に対するマイナス感情にはならない(ただ誘惑が起きなかっただけである)。
ファンブルすると狂気体験を一時的に嫌悪し、次のロールまでは狂気体験を望まなくなる。通常は2週間に1度程度このロールを行う。
カルト特殊ルーン魔法:
アブノーマル・シンポシュオン(倒錯の宴:Abnormal Symposion)
1ポイント、接触、持続、重複可、再使用可
対象に「悦楽の宴」の最終段階の狂気体験を与える。重複させると接触している者ならばその重複分の人数に狂気体験を与える。
この狂気体験は擬似的なもので、POWチェックと狂気度への経験チェックは入らないが、得られる快楽はほぼ同じである。
本当の「悦楽の宴」の最終段階にこの魔法を使用すると、快楽のみ成功レベルがあがったように感じられる。この魔法はプリーストには作用しない。
チェンジ・ケイオスフィーチャー(混沌の諸相の変化:Change Chaos Feature)
2ポイント、接触、持続1年、重複不可、再使用可
対象の持つケイオスの諸相を変化させる魔法である。セドの呪いかケイオスの諸相かから決めなおす。一度変化させた諸相は1年間は変更できない。また1年経つと持続時間が切れ、もとの諸相(又はセドの呪い)に戻る。1ポイントのディバイン・インターベンションを重複することにより諸相を選ぶことができる。ただし同じ諸相を2回以上選ぶことはできない。
この魔法を再使用不可として使用すると、変化が永続する(諸相を決めてから永続させるかどうかを決定してよい)。
ミューテーション(変異:Mutation)
3ポイント、接触、1シーズンか永続、重複不可、再使用不可
肉体的変異を発現させる魔法である。この魔法は「悦楽の宴」の最終段階でのみ発動させることができる。変化を望まない対象にはMP抵抗ロールで成功しなければならない。成功すると対象に肉体的変異を発現させ、狂気度が5%増える。失敗しても1シーズンは肉体的変異と狂気度+5%が残る。
この効果はディスペルできない。またディバインインターベンションでもその効果を取り除くことはできない。
※ Copyright 栗原 守(storm mark) 1994/01/03
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