道中、彼女はユールマルに出会った。ユールマルはヴィンガを口説こうとしたが、ヴィンガは卓をユールマルにひっくり返すと「彼の短い髪の毛をつかみ」、ユールマルにむりやり彼が弟オーランスに教えた秘密を教えさせた。彼が約束を果たすよう念を入れ、ヴィンガは担保としてユールマルの「局部を切り放して」差し押さえた。
ユールマルはオーランスの環に忍び込むと、「死」を偽物ととりかえた。ヴィンガはユールマルから「死」を受け取ると、彼の陰部を野バラのしげみに放り込んだ(ユールマルはあわてて取りにいった)。それから彼女は、何度もオーランスに恥をかかせた皇帝を探しに行ったのである。もし彼女がイェルムを辱めることができたならば、オーランスは彼女を彼の「戦の環」に加えざるをえなかっただろう。だが不幸にも、彼女はちょうどオーランスが「死」の偽物でイェルムを殺すところに居合わせ、それを目にしたのだった。
落胆して、彼女は「死」を放り投げた。ユールマルがそれを拾い上げた。彼のいたずらを止められる者もなく、ユールマルはその場に偽物をおいて去った。後にヴィンガは「死」を探しに行き、ユールマルの残した偽物を見つけるとそれを腰に吊った。
嵐の時代、ヴィンガは多くの冒険をした。しかし彼女が戦利品をオーランスに捧げるたびに、彼はヴィンガの頭をなでると彼女にこう言うのだった。「おまえが美しいあいだは、戦の環はお前のいるべき場所ではない」と。後にオーランスは皇帝を殺して後悔した後、そのようなことを言った自分の愚かさを後悔することになったのだったが……。
黄金の丘の上、エルマル(Elmal)(訳注:オーランス神殿の太陽神)がゾラーク・ゾラーンとその手下たちから身を守るために戦い、オーランスに授けられた炎の槍をもってしても打ち負かされようとしたそのとき、ヴィンガは戦いに飛び込んできて彼の脇に立った(※3、※4)。二人は兄妹のように暗黒の怪物と戦い、それを追い払った。戦いの中でヴィンガのすばらしい褐色の髪、大地の豊穗の色の髪はゾラーク・ゾラーンにむさぼり食われて、彼女は丸坊主にされてしまった。頭のてっぺんにはトロウルの歯の噛み傷を負っていた。エルマルは、彼女を最も名誉ある戦士であるとして、自分の側にいるように命じた。オーランスが「光持ち帰りしものたちの探索」から帰還したときまで、彼女はエルマルと供にあった。オーランスは彼の近侍に「なぜヴィンガが戦士として座についているのだ」と尋ね、ヴィンガの勇気と犠牲を聞いた。彼は姉を見て、そして恥入った。彼女の美貌は暗黒にむさぼり食われてしまった。彼女と結婚する男などあろうはずもないではないか!
だがオーランスはヴィンガの瞳を見、彼女の顔に悲しみの色もないのを見てさらに恥入った。彼女は名誉を誇り、戦士にして英雄たる自分の地位を喜んでいた。そしてオーランスは炉辺ではなく、戦の環がヴィンガの居場所であることを理解したのである。オーランスはヴィンガを側に呼ぶと、彼女を戦の環に加えた。そして彼は、エルマルを護ったしるしとして、彼女に美しい赤い髪を贈った──彼女の護った火の色の髪である。
酔っぱらいの田舎者:ヴィンガ信徒は結婚を禁じられていないが、結婚することは珍しい。ヴィンガがある程度復讐者の役割をもっていることから、よく戦いで夫を失った女性がヴィンガ信徒になることがある。しかしヴィンガは未だ社会の環の内にあり、そのため彼女の信徒はバービスター・ゴアのような恐ろしくもひたむきな復讐者とはならない。さらに、ヴィンガの信仰をアーナールダの信仰へと変えることが可能である。
「よう赤毛さん、おらとつきあわねえか?」
ヴィンガ信徒:(可愛らしく笑って)
「またね、このこん畜生!」
酒場の群衆はどっと笑いくずれる。ぐでんぐでんの田舎者:
「よう黒髪の姐ちゃん、おらとつきあわねえか?」
バービスター・ゴア信徒:(斧を引き寄せて)
「死ね!死ね!死ね!」
群衆は逃げ去り、哀れな酔漢は手足をばらばらにされて殺される。
混沌は究極の敵である。なぜなら、彼女の姉たちや母に悲しみをもたらしたから。暗黒と暗黒のカルトも嫌われる。ヴィンガがエルマルの脇に立って、ゾラーク・ゾラーンと戦ったからである。このトロウルの狂戦士の神は、ヴィンガのカルトにとって特別な敵だ考えられている。おもにヴィンガが神話時代に何度もユールマルをうまく使ったという理由で、ヴィンガ信徒はユールマルのトリックスターを大目にみている。バーンターは、彼女が「死」に触れた後で彼女の豊穗を元に戻したというので、好まれる神である。ヘラーとヴィンガは非常に密接な関係を持っている。この二神は結婚したのだと主張する者もいる。
エルマル信徒はヴィンガ信徒と特に仲がよく、エルマル信徒の戦士がヴィンガ信徒を妻に迎えたり、エルマル信徒が彼の娘の一人(もしくは何人か)にヴィンガ信徒になるよう奬めるこということも時に聞かれる。ヴィンガもエルマルをとても近しいものだと考えている。なぜなら、彼が初めて彼女を「そうでありたい」と思っていたように扱ってくれたからである。
他方、イェルマリオ信徒はあまりヴィンガ信徒を好いていない。彼らは彼女たちはふしだらな女であり、概して貞節でないと思っている。ヴィンガはイェルマリオを哀れっぽく泣きわめく小僧であり、女に戦いで助けてもらったと認められないほど妬み深いのだと考えている。
イェローナ信徒とヴィンガ信徒は水と油の間柄である。ヴィンガはイェローナを「神経質な小娘」と見なし、イェローナはヴィンガを「髪を染めた無宿者」と見なしている。
望んで入信者になろうとする者は、オーランスの氏族の(少なくとも)16歳の女性でなくてはならず、加えて〈言いくるめ〉、〈ジャンプ〉、〈嵐語会話〉、〈武器攻撃〉、〈武器受け〉のうちの3つの技能に成功してみせなくてはならない。入信の試験にあたっては50ルナー相当の金額をカルトに支払う必要がある。入信するときには1ポイントのPOWを捧げる。入信者は収入の10%をオーランスの司祭か赤い女卿に納めなくてはならない。祈祷師や魔道士になってはならず、また1年に1週間はオーランスの共同体を守って過ごすことを要求される。
入信者はオーランス社会で「戦士」としての地位を与えられる。彼女は屋根と毛布と、氏族での居場所を提供される。また1年に50時間のカルト技能の訓練を受けることができ、5年ごとに1ポイントのカルト精霊呪文を無料で修得することができる。彼女たちは〈嵐語会話〉と〈雄弁〉を25%まで無料で教えてもらえる。入信者はオーランスの基準に従い、POWを捧げて1回限りで神性呪文を獲得する。
| 精霊魔術: | 《惑い》、《鋭刃》、《機敏》、《敵の検知》、《治癒》、《霊話》、《早足》 |
赤い女卿になろうとする者は、一年にわたって評判のよい入信者でなくてはならない。彼女は〈剣攻撃〉に90%、加えて以下のうちの4つの技能について90%の技能を持たねばならない:〈登はん〉、〈言いくるめ〉、〈隠れる〉、〈人間知識〉、〈ジャンプ〉、〈乗馬〉、〈捜索〉、〈忍び歩き〉、〈嵐語会話〉、〈武器攻撃〉、〈武器受け〉。さらに彼女は簡単な試験に合格せねばならない(司祭によって彼女についての神託が下される──GMが決定する)。 POWの×3倍以下の判定に成功することによって、新しい赤い女卿は同盟精霊を与えられる。この精霊は覚醒したシャドウキャットか、赤い女卿の剣に呪縛される。
赤い女卿は、「光持ち帰りしものたち」への誓約と責務(アヴァロン・ヒルの「ゆりかご河」参照)を負わないことを除き、風の王と似たような義務を負う。しかし、彼女らは司祭として嵐の声に敬意をもって従わねばならない。また、“神々の王”オーランスの族長や、その他の代表者たちにも従わねばならない。赤い女卿は時間の90%をカルトの義務(その中には平信者や入信者の訓練も含まれる)に捧げなくてはならない。彼女たちは「戦のバンド」を作ろうとはしない。
エルマルのカルトの者に出会ったならば、儀礼的に助力を申し出なくてはならない。もし助力が受け入れられたならば、彼女たちは(それがカルト内部の脅威だとしても)そのカルトの者を護る義務を負う。その後で彼女たちは歓待を要求することができる(ある儀礼に従えば、それには干し草の束が含まれている)。イェルマリオ信徒に出会ったならば、同じ申し出をせねばならない。しかしほとんどのイェルマリオ信徒はこの申し出を断わる。それは赤い女に借りをつくることになるからである。赤い女卿はイェローナ信徒を侮辱する必要はない。彼女たちはイェローナ信徒たちを「脚を組んだ乾いた谷のまぬけ」(cross-Legged, dry-valleyed prunes)と呼ぶが、それはただの一般的な慣習にすぎない。
赤い女卿は、ルーン王であり神性介入のロールを1D10で判定することができる。赤い女卿は以下の神性呪文を再使用可で得られる。
| 一般神性魔術: | 《傷の治癒》、《聖別》、《ヴィンガ礼拝》 |
| (訳注:《呪文伝授》も使えるだろう。) |
| 特殊神性魔術: | 《シルフ支配》、《飛行》、《魅了》、《命中》、《盾》、《風の便り》 |
| 赤い女卿はオーランスの呪文をPOWを捧げて1回限りで獲得することもできる。 |
※2:
オーランス人社会では、この話の多くの面は一般には知られていない。ST16世紀のオーランス人のほとんどは、オーランスが愛する姉を"戦の環"に加えなかったという考えに驚いたはずである。
さらに、ほとんどのオーランス人は(証拠もなしに)ヴィンガをオーランスの妹であると考えていた。ノチェット図書館 #4J/37 青-K11/*R、セオドリック・ガーランドの素晴らしい論文『信念と隠された信念』を参照のこと。
※3:
イェルマリオ信徒のいるオーランス人の住む地域では、少し違った話を伝えている。彼らの話では、ヴィンガはイェルマリオの脇に立って戦ったのではなく、イェルマリオが打ち負かされた後で戦いに加わり、その恐れ知らずの戦い方でゾラーク・ゾラーンを追い払ったということになっている。
※4:
イェルマリオ信徒自身は別の話を伝えている。彼らによると、ヴィンガは馬鹿のようにつっ立ってイェルマリオが傷つくのを見ていたのだが、ゾラーク・ゾラーンが去ると彼女は弱った神に忍び寄り、えぐり取られた火の力の残滓を盗もうと「悪しきたくらみ」をめぐらしたというのである。イェルマリオはとまどい、世話をしてもらえるという思いに屈してしまった。だが残っていた力はヴィンガの髪を赤く染めるだけでしかなかった──その髪の色は、彼女のふしだらさのしるしなのである。それから彼女は他の犠牲者を探して走り去ったのだという。
※5:
ヴィンガのカルトの指導者が「赤い女卿」として知られていたという事は、ルナー帝国がサーターに入ってきた時には混乱の元となった。帝国はカルトの「赤」の側面を利用しようとしたのである(カリルの行動が典型的なヴィンガ信徒のものであるなら、利用できなかったようであるが)。
※6:
イェルマリオの呪文を扱うことについては論議がある。確かに著しく神知者的な性向を持つ学者の中には、イェルマリオは友好神のために「ルール」を適用しないはずがない、と異論を唱えるものもいる。だがしかし、イェルマリオが信仰されていた地の文献の中には、「イェルマリオから提供された」と主張するヴィンガ信徒によってこの呪文が使われたということが記されているものがあるのである。
ヴィンガは「グローランサ年代記」で初めて言及された女神です。イェローナ、バービスター・ゴアにつづく新たなヒロインカルトの登場といったところでしょうか。基本的にはオーランス信者と変わらないのでプレイしやすいと思います。カルト神性呪文の《魅了》はかなり極悪。
カルトのルーン王 RED LADY は(イェローナの STAR LADY が「星の貴婦人」と訳されていることからすると)、「赤い貴婦人」と訳すべきかもしれません。訳者は「貴婦人」ではイメージが違うと感じたので「赤い女卿」と訳させてもらいました。
本文のなかでたびたび言及されている「オーランス神殿の太陽神」エルマルについては、RQ_FAQ の項1 を参照されるとよいと思います。
(注:エルマルについては新たに追加されたライトアップを参照してください。)
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